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1996年08月号 掲載

 
サバドールという名を持つ街 ブラジル・バイヤ州 
関 洋人 (大洲市在住)

街の中心部ペロウリーニョ地区に残るパステルカラーの奴隷市場。ユネスコの世界文化遺産に指定されている。

カポエイラ。長い棒のように見えるのがビリンバウ。
観光客は見物料を取られることもある。
 大西洋に面した、ブラジルの北東部のバイア州ににサルバドール=救世主と呼ばれる街がある。 (又の名をバイアという。) 十六世紀半ばから約二世紀にわたってブラジル最初の首都として栄え、独立当時のブラジル経済を支えていた砂糖黍プランテーションで酷使された黒人奴隷の集散地でもあった。今も、街の中心部には、ユネスコの世界文化遺産に指定された奴隷市場の建物が当時のままの姿で残っている。一八八八年、世界で最後に奴隷制が廃止されるまで、この街は黒人奴隷達にとって、とてもサルバドール=救世主どころではなかった。砂糖黍産業の繁栄が遠い過去のものとなった今もこの街は二百万余の人々の暮らすブラジル屈指の大都会で、住民の七割以上が黒人系で占められている。
 街を徘徊すると、そこここの広場で、若者達がカポエイラの練習中である。カポエイラとは奴隷制時代に武術を禁じられた奴隷達が踊りにかこつけて編み出した一種の格闘技である。その起源はアフリカはアンゴラの地とされている。ビリンバウという独特の弓を使った楽器の伴奏を伴い、なかなかの迫力と独特の雰囲気がある。
(つづく)


ボンフィン教会前で。
少女が手にしているのがボンフィン・リボン。
この街は古い都だけあって、土地の人々が「一年を通して、毎日違う教会にお参りできる」と自慢するほど教会が多い。その数ある教会の中でも、一番多くの信者を集めているのが、奇跡の教会と呼ばれ、病気平癒や祈願成就の願掛けのメッカとしてブラジル全土に知れ渡ったボンフィン教会だ。と云っても、もちろん日本でこの教会を知る人は少ないのだが、Jリーグ発足以来、サッカー選手にあやかって少年少女たちが手首に巻いているミサンガなるものを知る人は多いだろう。このミサンガこそ、ボンフィン教会界隈で売られる願掛け用のボンフィン・リボンをブラジル選手たちが手首に巻いたのを真似たものなのだ。このリボンは腕に巻いたのが自然に切れたときに願いが叶うとされている。但しなぜか三度までだが、一本、邦貨一二円であることを思えば効率のよい願掛けだ。
(つづく)

 
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