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1997年01月号 掲載

 
サンタクルス あぶない話3 
関 洋人 (大洲市在住)

日本病院歯科のスタッフ。中央が小児歯科、右端が口腔外科のドクター。

日本病院  正面玄関の壁画
 サンタクルスの空港から街へ向かうタクシーから外を眺めると、行き交う車の車体に時折日本語が書いてある。○○業、××商店、△△鉄工所などなど。日本の中古車を輸入してそのまま、字を消さずに使っているのだ。
 サンタクルスのタクシーには、メーターがない。料金は乗る時点で運転手と交渉して決める。当然相場を知らないとボラれてしまうし、気をつけないと、車の床に大穴があいていたり、窓ガラスがなかったりする。ふと、足元を見ると地面が見えたり、雨が降ると窓側の体が濡れてしまうタクシーが多いのである。
 サンタクルスでは、友人が病院に勤務していたため、病院を見学する機会に恵まれた。サンタクルス最大かつ最新の設備を誇る日本病院の外観は日本の病院と全く同じである。
 正面玄関を入ると、壁に大きな絵が描かれている。病人の心をなごませるような絵なら理解できるが、これは一体何の目的で描かれているのだろうか? 描かれているのは、髪を掻きむしって苦しんでいる女性、暗い表情で車椅子に乗ったり、腹を押さえている男性、外科手術の様子、生気なくベットに横たわる病人、十字架の釘の部分からしたたり落ちる血。
 気の弱い人ならこの絵を見ただけで受診するのを思いとどまって、帰ってしまうような絵である。先ず、歯科を訪れた。口腔外科と小児歯科を専門とする二人のドクターがいる。口腔外科のドクターは、饒舌なはったり屋風の人物で、とにかく物不足なので何でもくれというのが彼の話の要点であった。
 次回はこの病院で見聞したことを紹介したい。
(つづく)

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