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1998年07月号 掲載

 
ペレン(ブラジル) 
関 洋人 (大洲市在住)

ペル・オ・ペーゾ、レストラン・ハカタのある界隈
 一九九〇年十二月二十九日、夕方五時過ぎにサルバドールで乗り込んだローカル便、クルゼイロ・ド・スル三〇〇便は、まるで各駅停車の列車のように、レシフェ、フォルタレッサ、サンルイスとほぼ一時間ずつ飛んでは、三十分休みを四回繰り返し、六時間以上かかって目的地のベレンに到着した。ベレンは、ほぼ赤道直下に位置するアマゾン河口の街である。リオからサルバドールまでのフライトクルーは、操縦席でビールを飲んでいた。サルバドールからベレンの間は、私とドクトルの座席がコックビットから離れていたために飲酒操縦は確認できなかったが、スチュワーデスの大らかさは充分に堪能した。彼女たちは暇さえあれば、飲み物を片手にチョコレートを頬張りながら、ペチャクチャと屈託のないおしゃべりに余念がない。あるスチュワーデスなぞは、豪快に鼻くそをほじくりながら機内食を配膳してくれた。ブラジルの田舎、ノルデスチ(北東部)のフライトはかくものどかである。
 ベレンの空港はそのときが二度目だった。ちょうどその二年前、ブラジリアからベレン経由でマナウスに向かって飛んだことがある。雨季のはじまりを告げる激しい雷鳴の中、飛行機が、ここベレンの空港に立ち寄った。そのときの恐ろしい伴奏つきのフライトのことはいまもはっきりと覚えている。
 私とドクトルは真夜中過ぎに空港を出て、旅行社に押し付けられた高級ホテル、ヒルトン・インターナショナル・ベレンにチェックインした。
(つづく)

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