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2000年08月号 掲載

 
ペルー・アマゾニア紀行 5
関 洋人 (大洲市在住)


 魚売場の奥には肉や鶏を売る店が軒を並べ、さらに、その周囲には、様々な日曜雑貨を売る店が何十何百と広がっている。  私たちは、その市場から溢れ出したかのような露店が両側にびっしりと並んだ左手の坂道を百mほど下り、有名なベレン地区に入った。ヤシの葉で葺いた高床式の住宅が密集する住宅地の入口に近づき、ちょうど露店が途切れた辺りには何人もの街頭散髪屋が立って客を待っている。高床式の住宅街の中をザッと散策し、坂道を上がって市場にもどった。市場の入口に近づくと、何やら煙が立っていて、うまそうな匂いがする。とれたてのアマゾンの特産魚を炭火で焼いて食べさせる露店が営業を始めたのだ。  匂いに釣られて露店のテーブルに座った。愛想のよい母娘が切り盛りしていて結構繁盛している。我々はジャンピーナという呼ばれるナマズの一種を焼いてもらった。しばらく待っていると、こんがりと焼き上がった魚の切身にプラターノ(加熱調理用バナナ。パンなどの主食の一つ)を添えた皿が供された。しめて1Sol45円。好みでテーブルの上に置いてあるアヒ(唐辛子を主成分とするソース)などのソースをかけて食べる。最初、このソースはひどく辛いのではないかと警戒していたのだが、少しずつ試すと、それほどでもない。魚によくあってなかなか旨い!テーブルには、食後の手拭き用にトイレットペーパーまで置いてある。こういう心遣いは南米ではなかなか見当らない。思いがけない場所で、朝の焼魚定食にありつきわれわれは大満足。食後に、われわれは再び、市場の中を徘徊した。ドクトルは先ほどの亀の店の前でまた立ち止まり、解体され、瞑目した亀の頭部などをじっと見つめている。彼はどうも亀に対して常ならぬ、強い執着があるようだ。



 ホテルヘの帰りには、一本河から入った大通りを通った。まだ朝八時をまわった所だというのに、商店の軒先では若い女性の従業員たちが、箒と塵取りで開店前の掃除にせいを出していた。掃除の仕方が実にこまめなので、感心して思わず見とれてしまった。
 一般にペルーの人はさほど勤勉ではないと言われている。しかし、この後もわれわれはその評判が事実とはだいぶ違うことを強く認識させられる光景に何度となく出合うことになった。
(つづく)

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