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2002年03月号 掲載

 
オアハカ メキシコ南部山岳地帯 
関 洋人 (大洲市在住)


 恒例の朝の散歩の後、K君とH老を起こし、メルカドへ。オアハカのメルカドの一角には、外の道路に面してズラリと剥き出しの肉塊や、長く連なったソーセージをダラリとぶら下げて売っている肉屋が並んでいる。メルカドの内部は、意外に整然と区画され、品物も小綺麗に並べられている。内部を一通り歩きまわって、腹も減ってきたので朝食をとることにする。コメドール(大衆食堂)が集まる区画を歩く。その区画だけが壁、柱、椅子など全て濃い水色一色に塗られている。これはメキシコに限らず、中南米のメルカドのコメドールに共通した特徴なのだが理由はわからない。ガテマラとボリビアでその理由を尋ねてみたことがあるが納得のいく答えは得られなかった。もしおわかりの方がおられたら是非教えていただきたい。  その、水色の区画を、どの店に入ろうかと、店の品定めをしながら歩いていると、ほどなく、「MARIA TERESA」という仰々しい名のコメドールの、愛想のよいおっさんが手招きして「うちの店で食えよ」と声をかけてきた。客の入りもいいし、おっさんの愛想のよさにほだされてアイヨとばかりに椅子に腰をおろしてしまった。どこから見ても、このおっさんがオーストリア・ハスプブルグ家の末裔には見えないが、非常に親切で、我々を調理場まで招き入れて懇切丁寧に料理の説明をしてくれる。



 「MARIA TERESA」はこのおっさんと奥さんの二人で切り盛りしており、小学生位の男の子が店を手伝っている。例によって、ドクトルはその子供をすぐに掴まえ、彼を相手にスペイン語の研鑽に余念がない。これが上達の秘訣。
 鶏の足と人参の入ったスープ、ソーセージ入りの炒り卵をパンとトルティージャ(トウモロコシ粉のクレープ)と一緒に食べる。旨い。食後の巨大なコップに注がれたホット・チョコレートもいける。そう言えば、オアハカではよくチョコレート屋を見かけた。それもその筈、現在のチョコレートのルーツは今から七百年前メキシコにあったアステカ王国のチョコラトルというカカオの実から作った飲料にあるらしい。
 シナモンを加えたカカオ豆を、店の人が、直径三十センチメートルくらいの石臼を組み込んだ機械で碾いてくれる。石臼で碾かれたカカオ豆は機械の出口の受け皿で砂糖と混ざるようにしてあって、ペースト状のチョコレートになる。それに熱いミルクか湯を注いで飲むのである。
 美味しい朝食に大満足。前夜くたばっていたK君とH老も元気回復し、われわれはまたメルカドをの中をうろつきまわった。
(つづく)

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