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2004年10月号 掲載

 
リオ・デ・ジャネイロ 
関 洋人 (大洲市在住)

マクンバの一年間の厄落としの儀式
 翌朝は海岸の上空を飛び回るヘリコプターの爆音で目を覚ました。我々が到着する前々日の大晦日の深夜に、元旦の午前零時を期して、始まる花火大会の見物客を、定員の数倍も載せた船が転覆して、多くの死者や行方不明者を出していた。その捜索がまだ続いているのである。遭難者の中に、元閣僚の夫人が含まれているために、捜索の打ち切りをいつものようには簡単に出来ずにいるらしい。
 遭難事故はともかくとして、このコパカバーナの花火大会はなかなかの見物である。二度見物したが、コパカバーナ海岸の五、六ヶ所で約二十分ほどの間、ドンドンと立て続けに花火を打ち上げる。大洲の花火大会などは、休み休みコマーシャルを間に入れながらポツン、ポツンと打ち上げ、最後だけ派手にドンパチをやって終わるが、コパカバーナでは、あの最後の派手なドンパチが五、六カ所で同時に、延々と休みなく続くものと思えばいい。見物の群衆の興奮も一通りではない。てんで勝手に、あたり構わず爆竹を鳴らして騒ぎまくっているので、ぼんやりしていると結構危ない目に遭う。浜辺ではおどろおどろしいマクンバ(アフリカ由来のアニミズムとカトリックの混合宗教)の一年間の厄落としの儀式がいたる所でとりおこなわれている。無数の蝋燭が灯され、人々は思い思いに海に入り、供物を沖に流し、呪文を唱えながら、祖先の故郷であるアフリカの方角に(リオは他の地方に比較してアフリカ系が多い)向かって、海の神イエマンジャ(ブラジルでは海の神だが、元々、西アフリカニジェール河流域で信仰される河の神)に祈るのである。
(つづく)

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