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2005年11月号 掲載

 
ジュアゼイロ・ド・ノルチ(ブラジル) 
関 洋人 (大洲市在住)

朝のジュアゼイロ・ド・ノルチの町
 ホテルに荷物を置き、私と友人の二人で街に出た。ヘジーナは日課の昼寝をしたいらしくホテルに残った。友人は出がけに「さあ、パケラ(異性の品定め)に行こう」とわざとヘジーナに聞こえるように言っていたが、仕方のないやつだ。
 町はちょうどクリスマスで、どことなく華やいだ賑わいを感じる。公園では地元の子供たちがキリスト生誕かなにかの宗教劇をやっていた。パケラ(異性の品定め)ではないが、しばらく二人で街角に立ち止まり、行き交う人々の面立ちを眺めた。びっくりするほどの美人とは出逢わないが、人の良さそうな、どちらかというと東洋人に近い顔つきの人が多い。ここの人達はたいてい先住民(カリリー族)の血が混じっていると言われており、風貌にそれがはっきりと窺えた。二時間ほど、ぶらぶらとクリスマスの雑踏を歩きまわりホテルに戻った。
 夕食の「メインディッシュ」はスライスしたハヤトウリ(シュシュという)の山盛りの一皿。ハヤトウリは腹持ちもよく、そして何より安価であるから貧しい人達の食卓には欠かせない食べ物だ。今日も健全に午後十時に就寝。
 翌二十六日、午前二時に目覚めた。眠れない。仕方なくベッドの中で本を読もうとするのだが、部屋には裸電球一つしかなく読み辛い。暗い窓の外を眺めたりしながら、明るくなるのを待った。六時近くに、一人で近所を散歩。さすが宗教都市である。家々から漏れる祈りの声が早朝の町を包んでいる。小一時間してホテルに戻り朝食をすませた後、レンタカーを借りる。白いフィアットである。朝九時、私たちは、ついに今回の旅の目的地である八十キロ離れたエシュウに向けて出発した。

 (つづく)

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