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2003年03月号 掲載 
保内町観光ボランティアガイド誕生へ!
西宇和郡保内町 

旧白石和太郎邸洋館の玄関天井に描かれた世界地図を説明する大上昭さんと、 東京から見学に来た三人組の一人平林さん。

東洋紡績赤煉瓦倉庫跡(八興産業)。明治20年(1887)愛媛県で最初の紡績会社。 元は宇和紡績。四国で初めて電灯が点ったという。
 東京の知人が保内の町並みを三人で訪ねたいと電話をかけてきた。なぜ、わざわざ遠い愛媛のしかも保内町を知ったのか不思議だった。観光地でもないし、特別に知られた名所があるわけでもない。「どうして」と聞いたら「え、知らないの。白石和太郎邸だとか、近代建築の宝庫だっていうじゃないの。明治、大正の町並みがよく残っているって聞いたわよ」とすごい勢いでしゃべる。
 たしかに、保内には今も現役の愛媛蚕種株式会社(旧日進館)の宏壮な建物、細部の意匠が美しい白石和太郎邸洋館などを初めとして、今もところどころに和風洋風それぞれの近代建築が残っている。背後の山には昔の銅山施設など多くの産業遺跡があるとも聞く。しかし、町並み保存をことさらに看板にしているわけでもなく、普通の生活の匂いが色濃く漂う静かで落ち着いた町であるから、遠い都会の主婦が細かく建物の名前まで知っているのにはちょっとびっくりした。聞けば、NHKの文化センターで「近代建築を訪ねる」という講座を受講しているそうで、「保内」はその世界ではビック・ネームなのだそうだ。
 何も知らない私は、すぐに愛媛の近代建築にくわしい岡崎直司さんに相談することにした。幸運にも岡崎さんはちょうど、保内町観光協会と商工会が企画した保内町観光ボランティアガイド養成講座の講師を務めているという。岡崎さんに電話をすると「まだガイドの試運転中なんやけど、都合がついたら案内をたのんであげようか」とうれしいことを言う。
 一も二もなくお願いすることにした。保内町のガイド養成講座は去年の夏から今年三月までの八ヶ月の間、月一回のペースで開かれているそうで、ボランティアガイドに応募した人は三十五名。女性が三分の二をしめているという。スライドを使った町の歴史や近代建築の見方、見所などについての講義の他、保内の町並みを歩いての実技指導も三回行ったという。

明治十七年(1884)に創業した愛媛蚕種の冷蔵庫を覆う青石の石垣。

愛媛蚕種中庭。
 さて、当日、東京から来た近代建築マニアの主婦三人組を案内してくださったのは、ガイド養成講座受講中の大上昭さんと土居美恵子さんのお二人である。町並みの歴史から、それぞれの建物の細部の見所、フランス積みとかイギリス積みとかの煉瓦の積み方まで、こまかく親切に教えて下さった。少しも、知識の詰め込みのようでなくて、のんびりとした味わいがあって聞きやすかった。
 ボランティアガイドの制度は五月の連休あたりから本格的に始まる予定で、窓口は観光協会になるそうだ。
 
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