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1997年09月号 掲載

 
ラパス 
関 洋人 (大洲市在住)

ラパス。荒涼とした大地に住宅が密集する。
 クイ食って
 リャマのミイラや
 コチャバンバ
 白帽のチョリータ
 哀しい
 コチャバンバ

 コカ茶飲み
 明日は ラパスで
 死ぬかもね

 というわけで、コチャバンバを後にした我々は、一九九四年十二月二十七日午前十一時、遂に標高四千百メートル、世界一高いところに位置する、その名もラパスのエル・アルト(高い所の意)空港に到着した。着陸直前、眼下に灰褐色の剥き出しになった地表が広がる。森林限界を超えているせいか、低い灌木以外、あまり樹木は見あたらない。飛行機が滑走路に着地した後も、速度がなかなか落ちずヒヤリとした。標高が高いため空気が薄く、空気抵抗が少ないためだ。離陸となればなおさら大変らしい。とある物好きがB727機の離陸にかかる時間を計ってみた。結果は、低地サンタクルスのビルビル空港では二十五秒、ここラパスのエル・アルト空港では五十五秒。
 飛行機を降りて空港の建物へ向かう。ここで正直「ああ普通に呼吸できるな」と安堵した。ただ、やはり頭はボーッとして重く、歩みが重く感じられる。軽い高山病の症状だ。ラパスへ来る前に、さんざん高山病で死んだ話や処置の術がなく急遽低地に降ろされた話を聞かされて脅されていたため、この程度なら大丈夫と一安心。
 あるガイドブックに、空港に隣接して病院があり医療体制が完備してあるので高山病になっても心配ないという記述があった。しかし、私の見た限りでは病院などはなく、空港の建物の一隅にガランとした四畳半くらいの部屋があり、そこに酸素ボンベが一本置いてあるだけだった。
(つづく)

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