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2003年10月号 掲載

 
マナウス(ブラジル・アマゾナス州) 
関 洋人 (大洲市在住)

オオオニバス
 テーハ・ノヴァ島を出て、ネグロ河に戻り、上流の岸辺に建つ土産物屋でカヌーに乗り換えた私たちは、イガラッペと呼ばれる毛細血管のようにこみ入った小さな流れに入っていった。流れが行き止まって、池のように広がったところには有名なオオオニバスが水面を覆いつくしていた。船縁から濁った水中をのぞき込むとアロワナが泳いでいるのが見える。時たま、ワニもちょこんと頭を出す。昼過ぎに遊覧船に戻って昼食。ピラルクーのフリッタがメインメニューだった。白身のあっさりしたタラのような味。食後、またマナウスに向けて河を下る。船から眺める周囲の風景は、単調と言う言葉はこの景色のために存在する・とでも言いたいくらいに全く変化がなかった。川幅が五、六キロはある黒い水面の両側に緑色のジャングルが続いている。ただそれだけである。
 午後三時過ぎにマナウスに帰港。下船してしばらくの間、大晦日の午後の街をふらついた。路上の屋台には、ピトゥンバ、ププーニャ、タピオカ、トゥクマン等の熱帯の産物が並ぶ。ある屋台の店先にドロドロの白濁した液体にバナナやリンゴ、パイナップルのような果物の切れ端を浮かべた食べものを売っていた。後にマナウス出身のブラジル人に聞くと、これはSALADA DE FRUTAS COM CREME DELEITE というサラダの一種だった。


大晦日、切り刻まれた書類が街にあふれる。

 牛乳とクリームをまぜたのに果物を漬け込んだフルーツ・サラダである。私の妻はこれを非常に食べたがったが、一行の一人であるS氏に『絶対に腹をこわすからやめろ!』と強く止められた。その時は、得体の知れぬ食べものだったから渋々断念したが、妻は今もってこの時に食べなかったことを後悔している。
 マナウスのセントロ路上は一面紙屑だらけだ。これは大晦日に市中の人が不要になった書類などを切り刻んでビルの窓から紙吹雪にして撒く習慣があるからである。放埒というべきか、おおらかというべきか。夕刻ホテルに帰り、小憩。夜は十時から年越しのパーテイーでどんちゃん騒ぎ。しかし、明朝は釣りに出掛ける予定なので早々に切り上げる。

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