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1998年03月号 掲載

 
ラパス 
関 洋人 (大洲市在住)


 ティワナク遺跡へ着き一通り遺跡を巡った。この遺跡はまだほとんど未発掘で謎だらけだそうだが、私のような遺跡に大して興味の無い人間でも圧倒されるユカタン半島やガテマラにあるマヤ文明の遺跡に比べれば、別にどうってことはなかった。遺跡の中に一ヶ所露店の土産物屋がある。遺跡を象った品々の他に、ここでも化石が並べられていた。ラパスでは通りを歩いているだけで化石売りが声を掛けてくるが、ボリビアには化石売りがことほどさように多いのである。


遺跡のお土産
 道を引き返してチチカカ湖に向かう頃、汗ばむほどの陽気だった天候が急に冷え込んで、突然、大粒の雹が降ってきた。一日のうちに、目まぐるしく天気が変わる。午後一時半頃どうにかチチカカ湖畔のワタハカ村に到着。チチカカ湖はものの本に、よく「アンデス高地に佇む神秘の湖」とかなんとか書いてある。しかし、格別の感慨を起こさせるほどの風景ではなく、私にはただの湖という印象しかなかった。私はそれよりもこの村でチチカカ名物、平均体重四百グラムを誇る巨大なカエルを食べたかったのだ。レストランの親爺に、あるかとたずねてみたら、今の時期のカエルは毒をもっていて食べられぬとのこと、仕方なく遅い昼食にチチカカの鱒料理を食べた。


チチカカの鱒料理
 食後には、チチカカ名物の葦船やアドベで作られたかまくら風の家や博物館を見学した。博物館を出るときに、ほどなく十人位の日本人団体客が到着するという話を聞いた。われわれは博物館を去り、途中、あまり立派とはいえない体付きのリャマが荒地の草を食む姿を眺めながら、ラパスのホテルに帰った。
 夜の七時過ぎ、ゆっくり休んでいた我々をけたたましいサイレンの音が襲った。くだんの日本人観光客の一人がチチカカ湖からこのホテルに着いた途端に重い高山病で倒れ、救急車で病院に運ばれたのであった。やはり高山病は恐い!
 休息を取って元気を回復した我々は、散歩がてら坂道を上り、少し歩いて裏通りにあるチーファ(中華料理店)に入った。思いの外に旨い店であった。チチカカ湖産ペヘレイのチリソース煮、餃子、焼飯とかなり食べ過ぎ。それが翌日の悲劇の原因となったのである。
(つづく)

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