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2004年03月号 掲載

 
ガテマラ共和国 
関 洋人 (大洲市在住)

マヤ文明最大の遺跡  ティカル
 十二月二十三日、夕方六時に大阪を出発、サンフランシスコとロサンゼルスで乗り換え、さらにメキシコシテイー経由で、併せて約十六時間を超えるフライトの末に到着したのがなんと、同じ二十三日の夜十一時半。時差とはまことに摩訶不思議なものである。翌二十四日は終日ガテマラシティーをふらついた。二十五日には、二十人乗りの小型飛行機による片道一時間のフライトでマヤ文明最大の遺跡ティカルに日帰りの旅。ようやく、二十六日の早朝われわれは、ガテマラシティーを出発し、アンティグアに向かった。われわれは、アンティグアに到着すると、今回の旅の目的である日本語学校、サン・ホセ・エル・ビエホを捜して、様子をうかがった。休日の土曜日のせいか門は固く閉ざされたままである。しかし、よく見ると入口のドアの上端に埃が堆く積もっている。一瞬「こりゃダメかもね」との想いが頭を掠めたが、とりあえず、今日の目的地チチカステナンゴに向かって出発することにした。

 チチカステナンゴまでは、マリオという初老の運転手が運転する車に乗った。マイアミに住む亡命キューバ人のゲイ夫婦が同乗している。チチカステナンゴはマヤの末裔であるキチエ族の信仰を集めるサント・トマス教会の門前町みたいな村で、メルカド(市)の立つ木曜日と日曜日には人口が千人に満たぬこの村が約二万人の人で賑わう。

 夕方到着して、早速買物に出掛ける。ここで光るのがドクトルの粘り腰だ。先ず相手に値段を尋ねる。『そりゃ高い、高すぎる、まけろ』。次に私を巻き込む。『二つ買うからもっとまけろ!!』そして、『高すぎるよ、もういい』、と帰る格好をする。相手が引き留めに掛かると『明日はフィェスタ(祭)だろ。もうちょっとまけろよ』。この交渉は微妙な呼吸と押しの強さの勝負。もともとふっかけているから、買値は最初の言い値の三分の一程に下がる。ほとんど値引き交渉を楽しむための買い物としか思えない。

首つりの女神「イシュ・タブ」
チチカステナンゴの宿はちょっとユニークだった。部屋の電灯が裸電球なのはともかく、その電球にかけてある笠に描かれた絵柄が変わっている。裸の女性の首つりの図なのである。この女性は「イシュ・タブ」といい、首つり自殺の神であるという。マヤでは首つり自殺は祝福される死に方であり、死後は至福に満たされるという。興味ある方はお試しあれ!と言いたいところだが、もちろん結果に責任は持てません。
(つづく)

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