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1998年12月号 掲載
第 23 回 御荘牡蠣(かき)
稲田水産 
愛媛県南宇和郡御荘町平山1295 
TEL0895-74-0627

御荘湾の養殖場で

 あーっ、牡蠣が食べたい。冬は牡蠣だ。殻をこじ開け、レモンを搾りかけて、ぷりぷりした牡蠣を、潮の香りとともに一気にすすりたい。
 朝刊で「御荘牡蠣」の出荷が始まったという記事を見た日(十一月二十九日)の午後、南宇和郡御荘町平山に出かけた。牡蠣養殖に長い歴史を持つ平山産の「御荘牡蠣」のおいしさはこの地方では早くから知られている。土曜日で御荘町漁協は休みだったが、漁協の事務所の少し手前の岸壁に繋留された稲田水産の屋形で今日水揚げされたばかりの牡蠣を打ってもらった。御荘の牡蠣は、身入りがよいといわれるが実際に剥いたばかりの牡蠣は、この時期にしてはよく身がつまっていた。さわやかな白い色をしていて肉付きも良い。  作業船で、湾内の養殖場を見せてもらった。御荘湾の養殖牡蠣は、湾の一部で埋め立てが行われた後、地元の牡蠣が夏を越せなくなったため、今は広島生まれの牡蠣を仕入れて九月から湾内の筏で育てている。広島出身でも僧都川など三本の川が注ぐ御荘湾で育てると、二ヵ月で、完璧に肉が張ったぷりぷりの「御荘牡蠣」に生まれ変わるのだそうだ。
 今は、走りの時期で、剥き身が一キロ二千五百円、殻付きが千円だ。それぞれ一キロずつ分けてもらった。

水揚げしたばかりの牡蠣を打つ稲田満美さん
 さて、その日の我が家の夕食は牡蠣のちり鍋と牡蠣フライ。肉付きがよく、あくのないおいしさを家族で心行くまで味わった。冷蔵庫に残しておいた殻付きの牡蠣と剥き身の半分は、卯之町駅前「ステーション」のシェフ横手さんの好意に甘えて、日曜日の開店前に持ち込み、何種類かの家庭でもできる牡蠣料理の作り方を指南してもらった。新鮮な牡蠣の旨味を引き出す料理ばかりなので、ぜひお試しください。自分で作るのはどうもという方は、ステーションに牡蠣が食べたいと電話してからお出かけください。
 冬よ来い。早く来い。これからが「御荘牡蠣」の本番。酒は、ビールでも白ワインでも日本酒でもよい。季節の味、牡蠣を存分に楽みたい。
 
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