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2008年10月号 掲載
第 110 回 森がおいしい
 
こもれび  久万高原町父野川318-3
電話・FAX 0892-21-2990 (定休日:水曜日、第2、4土曜日 )
ランチ11:30~14:00(1500円~)  カフェ11:30~17:00  ディナー18:00~21:00(予約のみ)
(私は行き当たりばったりででかけましたが、予約して出かけたほうがいいかもしれません)


カツレツ 二日目の肉料理


雨の日に自転車で


木のテーブルと椅子

古い建具と新しい造作が調和している
 松山の喫茶店のご主人に久万高原町父野川の森においしいレストランがあると聞き、自転車で、内子から久万に上がったときに、立寄ってみた。
 内子から大瀬を通り、小田の町中を過ぎて、つづら折の坂道をのんびりとあがった。道のいたるところに栗が落ちていて、山裾では、彼岸花が少し色褪せ、柿の実が色づいていた。山村はすっかり秋の風景である。大平を過ぎ、真弓峠のトンネルを抜け、トンネルの出口から下りになる道を、久万に向かって右手にあると聞いた看板を見過ごさぬように、スピードを抑えてゆっくり下る。二名方面に道が分岐する場所の少し手前、右手の田圃の中から山に入る細い道の入口に、「甲斐工房」「こもれび」と書いたまだ新しい看板があった。この道は、オートキャンブ場へ入る道でもあるようだ。田圃を横切り、急な山道に入ると、正面に右方向に矢印のついた「こもれび1.5キロ」という案内板があった。最初は勾配がややきつい。右に左に曲がりながら、桧の植林の中をペダルを漕いであがって行くと、少し上りが楽になる。もうそろそろかなと思うころ、また勾配がきつくなり、道の左右の林の木に、何ケ所か「子供がいます。飛び出し注意」というかわいらしい看板が取り付けてあった。二度くらい曲がると空が少し開けて、右手に「甲斐工房」と「こもれび」の建物が見えた。少し息が上がる。自転車を押して中に入ると左手に工房があり、右手に下る道があって、菜園や青い屋根の建物が見えた。「こもれび」はつきあたりの建物で、外見はふつうの住宅のようだ。二階のベランダの手摺りに布団がほしてあった。

前菜
 一日目の自家製ハムもおいしかった

モンブラン
 デザートは他にも数種類。どれもおいしそうだった


 玄関で靴を脱いで上がると中は新しい木の香りがいっぱいだった。高い吹き抜けの天井に天窓がある。古い建具や家具と新しい白木の造作が混ざり合っているが、それが空間に気取りのなさと寛ぎを与えている気がした。テーブルや椅子もみな木製でどっしりと座り心地がよい。
 昼のランチを注文した。自家製ハムと野菜のシーザーサラダ、茄子や冬瓜の前菜3種とカワハギのポアレ。メニューが黒板に書いてあり、昼は前菜に魚、肉料理それぞれ2種の定食のメニューから好みで選ぶ。食事はとてもおいしかった。自家製ハムの味もよかったし、自家菜園でとれたという野菜が格別においしい気がした。
 この店は東京から戻ってきた「甲斐工房」の娘さんご夫婦が7月に開かれたと言う。
 森に囲まれた山の中の静かな場所にあるが、すでにテレビにも紹介されたそうで、訪れる人も少なくないようだ。私は久万から松山に下った翌日、三坂峠を上って帰りにもう一度「こもれび」に寄ってみた。途中、父二峰郵便局を過ぎるころから、強い雨に降られたが、森の雨の風景もまたよかった。カツレツを食べ、パティシエの奥さんがつくったモンブランを食べ、温かい紅茶で人心地付いたころには雨も上がった。真弓峠から内子までの道を一気に下った。久万に行く楽しみが一つ増えた。

 
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