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2014年06月号 掲載
第 125 回 倉敷で
 
   
  

倉敷酒津デザート・コーヒ


倉敷酒津冷たい新玉ネギのスープ

倉敷酒津のランチ

「ひがし田」のシャコ

倉敷国際ホテルの部屋から大原美術館。

倉敷国際ホテル地下のバー
 5月末、倉敷に二晩泊まった。酒津の倉敷堤窯に武内真木さんを訪ね、用水のそばで地元の主婦が週末に開いている家庭料理のランチを食べた。心のこもった料理、お菓子もあいかわらずのすばらしさ。疎水の流れを見下ろしながら野鳥の囀りが聞こえてくる。少し下流に美観地区の三宅商店が早朝から喫茶店を開いている。こちらも悪くはない。朝からひっきりなしに若い女性や家族連れが入ってくる。夜は美観地区の宿に近いピザ屋さんに行ったり、ひがし田というお寿司屋さんでしゃこや鰆を食べた。2年前に一年間過ごした倉敷には何人かの知己ができ、土地ならではの食べものについて親切に教えてもらった。倉敷は、観光客向けの、いい食べものやさんがあるだけでなく、ふだんに家庭で食べる米や野菜や果物がおいしい。両方がうまくかみあっている。私のいる南予は家庭でたべるものはおいしいが、外来の客に安心してすすめられる店が少ない。生きのいい店と、昔に変わらぬ店がないわけではないが、しつらえや、町の雰囲気に表面的なごまかしが目立ち、妙に都会に迎合したはすっぱさが鼻につくところが多い。家庭の味が、南予のいい所かもしれないと思わないわけではないが、倉敷の郊外のおしゃれな店でゆったりと食事をしていると、南予の自然の中にも、気取らずおしゃれで、落ち着いて実がある店がもっと増えてほしいと思った。倉敷の宿はほとんど倉敷国際ホテルかアイビースクエアだ。国際ホテルは部屋に冷たい水が入ったポットがおいてあって、それが気に入っている。外で食事をした時は、寝る前にホテルの地下にあるバーでハイボールを一杯。店が空いていて、どこからですかと声をかけられたことがある。宇和島からと答えると、女性のバーテンさんの父上が宇和島出身で、親戚があるとのこと。のんびりした宇和島とじゃこ天が好きだと言ってくれた。店を仕切る男性のバーテンさんは、良寛さんが若い頃修業した玉島の人だった。しまなみ海道を走って、愛南町の中泊に、仲間と磯釣に来るそうだ。時に、釣果が思わしくないことがあっても、民宿の料理がどーんと出てきて、とてもおいしいので、がっかりしたことは一度もないとほめてくれた。つい、一杯のつもりが三杯になり心地よくなって、ぐっすり眠れることとなる。
 

アイビースクエアの近くのピザ屋さん。
巨大なギョウザ型のピザ

独特の香りのあるキノコのピザ






酒津の三宅商店。朝から賑わっている

 
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