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2002年06月号 掲載
第 56 回 まんじゅう街道 
 
愛媛県吉田町 白浦~法華津 
 

「猫は、どっかで涼んどるんじゃろ。」と、もりた製菓のおばあちゃん。

「まんじゅう街道」玉津の集落で海を離れ法華津峠への道に入る。
 吉田町の立間で国道五六号線をくぐって明浜への県道二七一号に入り、トンネルを抜けるとすぐ下に海が見えてくる。海の手前右側、白浦のバス停近くに小さな菓子店がある。クロネコヤマトの宅急便の旗と「名物黒まん」という新しい看板が目立っているからすぐにわかる。「もりた製菓」。名物の黒まんは一個六十円(税別)。黒砂糖の風味が素朴でおいしい田舎まんじゅうである。人の良さそうなおばあさんと大きな猫が店番をしている。
 海ぞいの県道を左折し、上り下りの岬を一つまわると玉津の集落が見えてくる。愛媛県果樹試験場南予分場の道標に従い海から離れて右手の旧道に入る。五分も走ると郵便局や保育園、小学校を過ぎた少し先に法華津のバス停がある。小さな広場のように道がひろがっているのですぐに分かる。そのバス停の真ん前に、看板らしい看板もない菓子屋とも雑貨屋ともつかぬ小さな店がある。山村菓子舗である。この店のうす皮饅頭がうまい。ほどよい大きさで、甘過ぎず、嫌味のない素朴な味だ。一個六十円(税別)。世にうす皮饅頭の名店は数知れず。近くでは、吉田茂が賞味し、たしかニューヨークでも売っていた卯之町の山田屋饅頭を好む人も多いであろう。しかし、私は、殆ど知られぬ(失礼)山村菓子舗の方に軍配をあげたい。
 明浜への街道沿いにあるこの二軒の菓子屋の饅頭がおいしいから、私は勝手にこの海沿いの道を「まんじゅう街道」と呼んでいる。

山村菓子舗のうすかわ饅頭

法華津バス停の山村菓子舗には看板がない。

黒まん  もりた製菓

北宇和郡吉田町白浦 10895-52-3634
うすかわ饅頭  山村菓子舗


北宇和郡吉田町法華津 10895-52-0065

※ 小さい店です。休みのことも、売り切れのこともあります。電話で前日に注文をしておくと確実です。

 
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