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2002年05月号 掲載 
「南伊予 描かれる町」展 開催
北宇和郡吉田町 


 来る五月二十五日より、北宇和郡吉田町国安の郷の米蔵ギャラリーで、昭和初期から現在に至る南予地方の美しい町並みや風景を描いた三人の画家の作品を集めた展覧会が開かれる。
 町には過去の記憶と現在のすがた、そして未来への予感が同居している。町はただ、暮らしの糧を得るだけの場所ではない。三人の画家のとらえた町の風景を見ていると、町が今生きている人たちだけのものではなく、過去に生きた人たちの記憶や未来に生きる子供たちのものでもあることを深く考えさせられるだろう。そして、町を歩くことが歓びであるような、「描かれる町」をふるさとに持てることの幸せを実感できるに違いないと思う。


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小林朝治「春の吉田港」
小林朝治● 信州須坂に生まれ、北陸金澤の医学校で学び、昭和二年に伊予吉田の町立病院初代眼科医長に就任。四年間を吉田町で過ごし、吉田の町並みや風景を描いた多くの油絵や版画を制作。俳句や詩をつくり、演劇活動なども行った。平塚運一や畦地梅太郎と交流があった。

藪野健「吉田町横堀界隈」
三輪田俊助● 一九一三(大正二)年愛媛県宇和島市出身・在住。帝国美術学校(現武蔵野美術大学)在学中の一九三八(昭和十三)年、浜田浜雄、石井新三郎ら美術学校の仲間たちとグループ「絵画」を結成。シュールレアリスム作品を制作した。既成画壇と遊離し、戦後は、郷里宇和島に暮し、意欲的かつ自然体で抽象的表現を追求している。一九九六年に大規模な回顧展が開かれた。

藪野 健「宇和町開明学校より宇和の町並み」

藪野健「吉田町旧K小児科医院の建物」
藪野健● 一九四三年名古屋市生まれ。画家、二紀会理事・早稲田大学教授。一九七〇年~七一年スペインのマドリード・サン・フェルディナンド美術学校プロフェソラードで学ぶ。安井賞佳作賞、二紀展文部大臣賞などを受賞。
 国内外を問わず、世界各地の町並みや建物を描き続ける。著書に『たてものをかく』(ポプラ社)・『明治建築の旅』(新潮社)・『歩く、感じる、描く、東京2時間ウォーキング』(中央公論新社)ほか。宇和町の依頼で絵葉書「宇和の町並み」の原画を制作。
吉田町国安の郷にて  5月25日(土)―6月23日(日) 9:00―17:00 TEL0895-52-4884 入場料 大人200円・中学生以下100円
 
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