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1998年04月号 掲載 
『野蛮ギャルド建築』
 
藤森 照信 著
 (TOTO出版(1,714円+税) ) 


 見て、読んで、心がワクワクする本だ。著者は元祖「建築探偵」として、ひたすら見ることに徹し、この四半世紀、洋の東西を問わず、世界中の「建物を相手に目玉で相撲を」取り続けてきた。その著者が、今回は建築家として自作を語った。目玉相撲で得たイメージを形にしていく著者の膂力のなんと強大無双なこと。発想は自在にして、融通無碍、しかもやることは論理的で、経験と技術の裏付けがしっかりとある。
 大自然の中に小さな人工物が寄生する、あるいは都市や建築という大きな人工物に自然が寄生する光景が美しいものだということを経験的に知っているという著者に強い共感を覚える。著者は自邸の屋根や壁にタンポポを植えた。今一つうまくいかない。次の作品、赤瀬川原平氏の家では、屋根にニラを植えてリターンマッチ……。明晰で、親しみやすい語り口と増田彰久氏の美しい写真は「建築探偵シリーズ」同様だ。巻末には、自然素材仕上げのレシピもついている。やってみたくなった。

(編集人)

 
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