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1998年05月号 掲載
第 16 回 なつかしいパンの味
坂田製パン所 
西宇和郡保内町川之石2-13 
TEL0894-36-0127 

坂田憲昭さんご夫婦。坂田製パン所は、金毘羅神社の参道前、保内町の美しい町並みの中でもひ ときわ美しい洋館の前にある。
 このお店のパンのおいしさを一口で表現すると、「なつかしい味」ということになるだろう。いやみも気取りもくどさもない、昔ながらのあっさりした味である。何も考えずにどのパンを頬張っても失望することはない。変わらぬなつかしい味が口中に広がるのである。定評のある食パンのほかに、漉しあん、小倉あん、白あんの各あんパンをはじめメロンパン、クリームパン、ジャムパンなど、長い間に定番となった菓子パンが毎日ほぼ、同じ時間に焼き上がる。
 創業は、はるか明治の昔。初めは、唐まんじゅうや、せんべいをつくるお菓子屋さんだった。大正の中頃に、今の店主坂田憲昭さんのお祖父さんが、東京でパン焼きを習い、飛騨の高山や北九州の門司などで修行した後に故郷に帰ってパン屋さんになった。それから七十年以上、「坂田のパン屋」と町の人たちに親しまれながら、店を続けてきたのである。坂田さんと奥さんが二人だけで仕込みからのパン作りの一切をまかなっている。

ジャムパンのおいしさにも驚いた。

坂田製パン所/
西宇和郡保内町川之石2-13
電話0894-36-0127
 したがって作れる数に限りがあるし、売れるからといって、数をふやす無理も、手抜きもしない。食パンは朝四時に仕込みが始まり焼き上がるのが七時過ぎ。菓子パンは午後二時くらいの焼き上がりだ。その時間を見計らって近所の人がパンをもとめにやってくる。ふっくらとして腰がある焼き立てのおいしさが格別であることを、みんな良く知っているのである。
 
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