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2014年05月号 掲載
第 124 回 深浦漁港のカツオと長英の砲台址
 
   
  

深浦食堂のカツオ刺身


深浦食堂のタタキ丼

久良の高野長英の砲台址

海岸へ下りる散策路に手すりが整備された

付属屋の石塁が残る。
 友人が自転車に乗りに来たり、宿毛の友人に会いに行く時に深浦漁港に立ち寄ることがある。 運が良ければ、水揚げされたばかりのカツオやヨコ(本マグロ)を仲買の人にわけてもらえることもあった。深浦は宮本輝の小説の舞台にもなっていて、漁港が現在地に移転する前からよく訪れてはいた。移転後も漁港の設備は全く同規模であるが、設備が更新され「漁港食堂」が出来た。そこでとれたてのカツオを食べさせてくれる。テレビや新聞にも紹介され、遠くから食べに来る人も増えている。私も友人を連れてなんどか食べた。地元の奥さんたちが親切に応対してくれ、鮮度は抜群で、都会から来た友人たちはみな喜んで食べてくれる。私もおいしいと思うのは同じだ。ただ、価格と量については疑問がある。おしゃれな幟旗やポスターなどもつくっていて、観光資源として宣伝に力を入れているようだが、漁港まではるばる来て食べる時に、価格設定が微妙だ。食堂は家庭料理の域であり、それで充分なのだが、量や盛りつけ方などが、高知県の土佐佐賀や、久礼などで食べる場合とくらべると、土地ならではの個性と豪快さに欠けていると思う。悪く言いたくはないし、繰り返し食べに行くのだが、いつもなんとなくうらぶれた思いがするる。愛媛は南に行けば行くほど、貧しくはあるが、人気があたたかく、おおらかだという評判だが、妙に都会の冷たい風を感じる。以前はカツオを簡単にわけてもらえたが、この間などはしっぽの折れたのとか、痛んだものをゆびさして、あれなら分けてあげるという。値段をきくと土佐佐賀の魚屋さんでまともなものが買える値段とかわらない。わざわざという気になってやめた。タイミングが悪かったのだろうとは思うがおもしろくなかった。新しい魚市場から久良の方へトンネルを抜けると左手の方に高野長英が設計した砲台の址が見える。海岸に付属屋の石塁が続いているのもそれとなくわかる。
以前、砲台跡の海岸へは道が途切れていたが、今は手すりが整備され海岸に安全に下りることが出来る。宇和島市樺崎の砲台址の無残な整備に比べると、久良の整備は素晴らしいと思った。海岸に流れ着いたゴミの多さには辟易したがこれは何処も同じことだ。
 
 
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