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2002年05月号 掲載
第 55 回 もう一つの「福ちゃんラーメン」 
福ちゃんラーメン 
大洲市田口甲77-1 大洲中央病院前 
TEL0893-23-0225 営業時間 午前11時30分~午後9時(休みは1の付く日)

麺を茹でる中岡雄二さん
 ラーメンが好きだ。しかし、愛媛のラーメンは、うどんに比べると今ひとつ弱いという感じをずっと持っていた。なじまないというか、気軽に、手軽に繰り返し食べに行く「ふつう」の店が少ない。松山だけでなく県内各地に、札幌ラーメンから始まって、博多ラーメンや尾道ラーメン、喜多方ラーメンの店まで出来、本格手打ち麺をうたった専門店の姿を街角で目にするようになった今でさえ、全体としては、やっぱり、ふつうに美味しく食べるということではまだうどんの域に達していないと思う。
 数少ない例外の一つに大洲の屋台「福ちゃんラーメン」がある。国道五十六号線、大洲市役所前に出る屋台は、ずっと客足が途絶えることがない。創業はいつか知らないがもうずいぶん長くつづいていることは間違いない。私は、松山からの帰りが遅くなったときなどに立ち寄ることがある。細すぎず腰のある麺と、しょうゆ味のスープが気に入っている。チャーシューやメンマなどの具も出しゃばらない適度な量、味もよい。澄んだスープは、こくがあるがしつこさがない。食後に軽い満足感と少し幸せな気分が残る、まさにラーメンらしいラーメンだ。
 私には、「福ちゃんラーメン」はうどんに押れがちな、わが愛媛県のラーメン屋さんの中では、ひときわ輝かしい存在のように思われる。足るを知る味というか、シンプルで奧が深い味というか、とにかく軽い気分でふつうに食べてあきないラーメンなのだ。ここには遠来の「博多ラーメン」に時たま感じるマニュアルのよそよそしい味は少しもない。

新メニュー鍋焼きラーメン550円
生麺なので鍋焼きにしても腰がある。

ラーメン450円
 最近、屋台の他に福ちゃんラーメンの店がもう一つあることを、友人が教えてくれた。「エッ、知らなかったの。息子さんがやっとるんよ。ずっと前からあったよ…。夜はあんまり食べれんから、お昼にときどき子供たちと食べに行くのよ」。
 早速、友人を誘い、昼の福ちゃんラーメンに出かけてみた。昼の店は屋台の店をやっている中岡タツエさんの息子さんが経営している。「材料は同じなんですけど、やっぱり少し屋台とは味が少し違うんです」という。屋台の雰囲気、親子の個性の違いもあるだろう。たしかに味は微妙に違い好みは分かれるが、おいしさの質はかわらない。また来たい、食べたい味であることにかわりはなかった。
 
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