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1997年05月号 掲載

 
コチャパンパ(ポリビア共和国) 
関 洋人 (大洲市在住)

チョリータ・ルック
 サンタクルスから、標高四、○○○メートルのラパスに行く前に、少しでも高地に慣れるために、標高二、五六○メートルのコチャバンバに立ち寄り、二泊三日を過ごすことにした。標高二、五六○メートルといってもばかにはできない。かつて、こことほぼ同じ標高のコロンビア、サンタフェ・デ・ボゴタを訪れた、『悲しみよこんにちは』の作家フランソワーズ・サガンは空港に着いた途端に意識を失って入院したくらいなのである。
 コチャバンバは南緯十七、五度、常春の国だ。人口は二十万人。到着した空港はまるっきり一昔前の国鉄のローカル駅の風情である。サンタクルスからコチャバンバに着くと、風土の違いをひしひしと感じる。
 サンタクルスは太陽の降りそそぐ熱帯の街で、住民もスペイン系が多いが、飛行機でわずか一時間弱、高さにして二、五○○メートル程上ったここコチャバンバは、圧倒的なインディヘナ(いわゆるインディオと呼ばれる先住民を最近は自らこう呼ぶことが多い)の土地である。
 この土地の街や村でわれわれ異邦人の眼を最も引きつけるのが、「チョリータ」である。「チョリータ」とは伝統的衣装を身に着けて伝統的生活様式を守る先住民の女性のことだ。チョリータ・ルックは次の通り。頭にはチャップリン風の帽子(出身地によって色が違うようだ)を被り、髪は長い三つ編み。背中には派手な色彩のインカ模様の風呂敷包み。スカートの下に何枚もペチコートを重ね着する。昔、この地の残虐極まる征服者であったスペイン人たちが、自分たちの家の使用人の女性にさせた格好が、今や伝統的スタイルと化してしまったのだ。哀れな話である。
(つづく)

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