過去の連載記事
同じ年の連載記事
1997年07月号 掲載

 
コチャパンパ(ポリビア共和国) 
関 洋人 (大洲市在住)

N氏
 クイを食い大満足の私たちは、食後に、コチャバンバ最大の規模で花を栽培しているN農園をアポイントメントなしで訪ねた。経営者のNさんは福島県出身の日本人である。ボリビアに移住して二十年、最初はサンタクルス郊外のサンファン居留地で米作りをしていた。その後、一時、アルゼンチンのブエノスアイレスに移り花の栽培を始めたのだが、ここ常春のコチャバンバが花づくりに最適と確信して再びボリビアに戻ってきた。ただ、コチャバンバは自然の条件は最高なのだが、良質の農業資材の入手が極めてむつかしい。たとえば、ビニールハウスのビニールひとつとっても、ボリビア製のものは一年ももたないという。チリ製のものは倍の二年は大丈夫なのでNさんは、ここでは、チリのビニールを使っている。
 花の出荷には人手がかかる。N氏は二十人くらいの従業員を傭っているとのこと。作業場に行くと従業員は全部女性で、黙々と働いていた。
 最近、近くでますの養殖も始めたというN氏は、異国で苦労を重ねた末に今日の成功を築いた人である。朴訥な人柄で、初対面の上に、突然訪問した私たちを笑顔で快く迎えてくれた。私は帰り際に、非礼を詫び、たまたま持ち合わせていた、ラパスの友人への土産物である茶や海苔、餅をお礼に渡して農園を辞した。
(つづく)

Copyright (C) H.SEKI. All Rights Reserved.
1996-2007