過去の連載記事
同じ年の連載記事
2003年02月号 掲載

 
イグアス 国境地帯の旅 
関 洋人 (大洲市在住)
 イグアスの滝のパラグアイ側プエルト・ストロエスネルの街は人口三十万、パラグアイ第二の都市である。しかもフリーポートとなっているため、ブラジルやアルゼンチンから国境を越えてやってくる買い物客で賑わっている。建ち並ぶ商店の前の両側の歩道には革製品の店や食べ物屋の露店がひしめき、サモサがピロシキのような揚げパンを売る店では、男たちがおしゃべりをしながらパンを頬張っている。巨大ソーセージをパンに挟んで売る店も多い。大学生のAくんは、実家が化粧品店であるせいか、あるいはガールフレンドへのお土産にするつもりか、その名も『MONALISA』という巨大な香水店で香水を買い漁り、H老は私に「関さん!なんて言ってるんだい?」と始終聞くがもちろんわかるわけがない。やっとこさ値段の数字がわかる程度が関の山。


「関さん、これいくらか聞いてよ」と言っているH老
 私は、この街の中国人が経営する店(この街には中国人と韓国人の経営する店が多い)でスーツケースを買った。このスーツケースは百五十ドルしたが、地球を七、八回は回るハードな旅にも耐え今も健在である。この店で買い物をした同行のS君が支払いにトラベラーズ・チェックを使った。店員がパスポートとトラベラーズ・チェックを持って店の奥に姿を消してから、再び我々の前に姿を現すまでにかなりの時間が経過した。われわれは店員がドロンしてしまったのではないかとずいぶん気を揉んだ。結局、このときには何の問題も起きなかったが、トラヴェラーズ・チェツクは中南米については必ずしも安全有利とは言えない。欧米先進諸国では番号を控えておけば、紛失後の再発行も盗難後の使用停止もすぐにできる。しかし、中南米の田舎町ではそうことは簡単に運ばない。私はあくまで現金主義者だ。それもできれぱ小額紙幣がいい。私が買物をするメルカド(市場)や露店では、ほんとに商売をやる気があるのかと疑わせるくらい釣り銭を用意していない。釣り銭がないと店の人は困った顔をして、小銭はないかと私に聞く(あればとっくに出している)。店の中を探し、続いて隣近所に両替を頼んで回る。その時の店の無防備なこと!
(つづく)

Copyright (C) H.SEKI. All Rights Reserved.
1996-2007