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1998年05月号 掲載

 
ラパス 
関 洋人 (大洲市在住)

積木で遊ぶ子供たち
私は、腹具合が思わしくなかったから、今朝、ホテルを出るとすぐに、M衛生士に保育園のトイレについて尋ねた。その時の彼女の返事はこうだった。「トイレ?ありますよ。でも、私には使えません。あれを使うくらいなら我慢します」。我慢できるくらいなら苦労はしない!
 M衛生士の言葉を反芻しながら、あらためて便座を見た。便座に汚物が夥しく付着している。いくら私でもとても座れない。腰を浮かした状態で排便しようとすると、なんとドアの外から子供が三人笑いながら覗き込んでいる。便所のドアは上半分が格子戸になっている。その格子戸を隔て、私の眼からわずか三十センチメートル位のところに、六個の好奇心の塊のような目玉が光っているのだ!しかも、悪いことに戸に鍵がなく、内側から手で引っ張っていないと戸の自重でひとりでに外に向かって開いてしまうのだ。窮した私は必死でガキどもに向かって叫んだ。“Tenho diarreia, Vo emdoa logo!”(下痢してるんだ。すぐに向こうへ行け!)


階段の下にトイレ
 私の声を聞きつけた職員が三人の子供たちを無理矢理連れていってくれた。それにしても、腰を浮かしての下利便は始末に終えないものだった。(……が幸い これっきりで腹具合はよくなった)
 この保育園の庭でも、日本の保育園と同様に小動物が飼育されていた。兎とクイ(テンジクネズミの一種)である。日本と違うのは動物たちがペットとして飼われているのではなく、食用として飼われているということだ。そして、食べられた動物たちの皮は保存され、内部に綿を詰めて縫い合わせ、玩具として使われていた。まったく無駄がないと言えば無駄がない。子供たちに「クイはおいしいかい?」と聞いてみた。みんな「おいしい。大好きよ」と屈託のない返事。
 検診は昼過ぎまでかかってようやく終わった。再びミクロを乗り継いでセントロヘ向かう。ドクトルはミクロの中で二人のチョリータに囲まれて至福の時をすごしている。

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