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2002年08月号 掲載

 
オアハカ メキシコ南部山岳地帯 
関 洋人 (大洲市在住)
 ホテルへ戻ると、皆はちょっと休みたいと言って自分の部屋に入ってしまった。私はまだ元気が残っていたので一人でもう一度ソカロまで出かてみることにした。さっきソカロで目について、ちょっと気になっていた画廊『Galeria arte de OAXACA』を覗いてみたいと思ったのである。  画廊に入ると、グリンゴ(主に米国人に対して用いる俗称)と思われる先客が四五人ばかりいた。彼らに混じって、しばらく束になって置いてある安物の版画をめくっていたら、隣にいた先客のグリンゴの一人が私に尋ねた。「値段の表示が$になっているが、これは米ドルか、それともメキシコペセタであるのか」と。$はもちろん、メキシコペセタなのだが、米ドルに慣れた人にとっては甚だ紛らわしい表示だ。当時は、一米ドル=二千六百六十ペセタだから、その差はほとんど天文学的でなかなか値段の見当がつきにくい。


「空気と大地」の版画
 私はあれやこれやとしばらく眺めた後に、『La puerta de la fantasia(幻想の港)』、『De aire y tierra(空気と大地)』、『La tavernera(居酒屋の女主人)』と題された三点の作品をまとめて購入した。というと豪勢な感じだが、値段は邦貨に換算すると全部あわせて約八千円ほど。
 帰国後、額装するとその代金の方が絵の値段とは比較ができないほど高くとられた。額に入れた版画を絵に詳しい歯科医の友人に見せたところ評価はまったくはかばかしくなかった。
 さらにその後、私がこのメキシコの旅から帰って四年以上も立った夏のこと、私にオアハカのこの画廊から大きな封筒に入った郵便物が届いたことを書いておかなければならない。開封してみると、それは「お得意さまへ。×月○日より、展覧会を開催いたします。ぜひお越しください。……」という立派な招待状だった。もちろん、遠いメキシコのオアハカに、はいそれでは、というわけにはいかないが、機会があったら再訪してみたいという気持ちを抱かせられたのである。
(つづく)

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