過去の連載記事
同じ年の連載記事




第20回 「てやてや」の町
 
八幡浜魚市場案内 
 洋の東西を問わず、世界中どこでも市場は人を、町を元気にさせる。わが八幡浜には、四国一の魚市場がある。約800人もの人々が働き、年間2万トン以上、100億円以上もの水揚げを誇る。活きのいい人と魚が毎日集まり、セリ人(びと)のテヤテヤというかけ声とともに生き生きとした風を町に送り続けている。

 日曜日は魚市場に行こう
 一般の家庭では、魚市場に行って魚を買うことはあまりない。スーパーや行きつけの魚屋さんで求めるのが日常であろう。しかし、たまには、誘い合って魚市場に出かけるのも悪くない。八幡浜の魚市場は土曜日が休みで、1週間は日曜日から始まる。日曜日に、家族を連れ、あるいは友人と連れ立ち、長靴を履き、買い物かごを下げて出かけてみよう。
 市場の活気溢れる雰囲気に触れると、なんとなく元気が出てくること請け合いだ。
 一般の消費者は、卸売場で魚を購入することはもちろん出来ないが、心配はない。海に向かって市場の右端の部分、卸売場に隣接した仲卸売場には20軒以上の魚屋さんが店を開いていて、朝6時からセリが始まるとすぐに卸売場で仕入れた活きのいい魚が、一斉に店頭に並べられる。どの店も魚の活きがいい上に、種類も驚くほど豊富で、値段もはっきりいって市中に比べて大分安いのである。遠くの友に宇和海の味を送ろうと思えばクール宅急便の用意まである。
 仲卸売場細見
 さて、始めて市場に来ると、どの店の品揃えもほとんど、同じに見える。迷ってしまいそうだ。しかし、実際にどこで魚を買っても値段と新しさには変わりはないし、どの店のご主人も相談すれば丁寧に魚のことを教えてくれるので何の心配もない。1軒、1軒まわっていれば、ご主人の個性やその店の品揃えの特徴なども見えて来て、そのうち自分の好みの店が出来てくる。
 八幡浜魚市場の仲卸売場にある一般向けの魚屋さんは、卸売場に向かって、真ん中に通路をはさみ左右2列に並んでいる。先ず、左側奥からご紹介する。

(有)有田鮮魚
TEL:0894-23-1818

 創業して40年以上、ご当主有田豊さんの母上、操子さんに伺った。「ウチはなんでもあるけど高級魚が主体。市内の店では仕出しもやってるからよろしく。小売も大歓迎」。仕入れの時間は無理だが、暇な時間には、買った魚を下ろしてもらえる。

宇都宮鮮魚
TEL:0894-23-2939
宇都宮さんご夫妻



 おばあちゃんの代から営業しているとのこと。
宇都宮勝博さんと佳代子さんの若いご夫婦が頑張っている。かいがいしく立ち働く、元気一杯の佳代子さんが「そうね、ウチは活きのよさとバラエティ豊富な品数の多さが自慢よ」と答えてくれた。

岩崎鮮魚
TEL:0894-23-2222
岩崎一敏さん(右)



 おじいさんの代からというご当主の岩崎一敏さん。「魚はなんでもあるよ。養殖ハマチも昔は、みんな嫌がったけどこの頃はほんとうに美味しくなった」。岩崎さんはお得意のお年寄りの好みを丁寧にたしかめながら、1匹、1匹、魚を選んであげていた。

竹田鮮魚
TEL:0894-22-4384
店を切り盛りする吉野悦子
さんと竹田マモルさん(右)


 ご当主は竹田勝芳さん。開業して約45年。「昔は、青魚中心だったのよ。アジとか、イワシ、ホータレ、サバ。ごらんの通り、今も一般向けの大衆魚中心で青魚には力を入れてる。新しくて美味しくて安い魚ばっかりよ」と奥さんの竹田マモルさん。

小西鮮魚
TEL:0894-23-0704
小西さん



 ご当主の小西亦春さんは朝が早い。「ウチは魚はなんでも揃うよ。でも今日はそろそろ売切れでおしまい。こんどはもっと早くきてね」。市内松柏で奥さんがお惣菜の店もやっている。そちらもよろしく。

堀江鮮魚
TEL:0894-24-2570
堀江さんと
奥さんの京子さん



 2代目のご当主、堀江博さんが「ウチは天然魚が中心。新しさと値段には自信がある」と語る。立派な鯛やハマチがずらりと並ぶ中、値段が格別安いのがあった。「なぜ?」、「よく見てよ。色が違うでしょう。昨日の残り」といつも真実一路の堀江さん。

臼井鮮魚(大島屋)
TEL:0894-22-0941(自宅)
臼井さん


 キャッチフレーズは「のんきな魚屋ののんきな亭主」と言う臼井さん。2人の弟さんは、それぞれ市内で有名なふぐ料理店を経営中。「そちらもよろしく」。臼井さんの魚屋さんは堀川町にある。

タナカ鮮魚
TEL:0894-22-5175
田中増夫さん



 ご当主田中増夫さんが2代目。仕入れの豪快さで知られる。「正直商売がモットー。売れ残ったら、昨日のもんは、昨日のもんいうて売る。でも昨日のもんは誰も買わん」とアッサリ話す田中さんのファンは多い。品揃えも豊富で買いやすい店である。

島崎鮮魚
TEL:0894-24-6930
島崎歌子さん左と安子さん。
持っている魚はメブト

 ご当主島崎泰吉さんと歌子さんのご夫婦、息子さんの保宏さんと安子さんのご夫婦で営業。「タイもハマチもアジも何でもあるけど、今はアマギがおいしいかな。フカの湯ざらしは毎日つくるよ」と安子さん。

田中鮮魚
TEL.0894-22-2228
田中幸夫さんと
信子さんご夫妻



 八幡浜市内バス停近くの中央マーケットの千代田町側に出店中。ここでは暮れの12月30日にしか、魚を売ってないが、「注文していただければ何でも揃えますよ」とご主人の田中幸男さんが話された。

富久保商店
TEL:0894-23-0464
右から富久保弘さん、奥さんの朱江さん、
息子さんの春彦君と三好満雄さん

 ご当主富久保弘さん3代目。大衆魚が中心で、大抵の魚が揃う。養殖3点セットの鯛、ハマチ、アジは欠かさないという。ご当主に「今は紋ダイがおいしい。薄づくりの刺身にしてもいいし、出汁がよく出るから鍋物にもよくあうよ」と教えてもらった。

竹村鮮魚
TEL:0894-24-3042
浜田賢治さんと3代目を嗣ぐ息子さんの昌洋君。



 ご当主は浜田賢治さんで創業40年。「竹村」の苗字は先代の名跡。昌洋くんも、お父さんをよく手伝って店を守る。「何でも揃うけどウチは、イカと太刀魚、アジには強いよ」とニッコリの浜田さん。

魚とら
TEL:0894-24-3044
河野修三さん(右端)とご家族



 「70年はやっとる。八幡浜はなんというても、魚市場と蜜柑の町じゃ。アンタ、蜜柑も宣伝せんといかんぞ」と3代目の河野修三さん。「魚はなんでもあるがな、会長ーッ。ウチは何が多いかの」と奥さんに聞かれた。1に穴子、2にサザエだそうである。

(有)黒潮水産
TEL:0894-24-6464
篠崎さん夫妻と
上島重信さん(中央)



 篠崎仁志さん、幹子さんのご夫婦ががんばっている。創業はおじいさんの時代。「ウチは活魚とマグロが主体です。マグロは大トロからなんでも揃うし、ヒラメも、活き伊勢海老もアワビもあります」

三原鮮魚店
TEL:0894-24-0089
三原進さん(中央)と夏江さんのご夫婦

自家製の鱧のくずし


 ハマチから鯛、アジ、ヒラメなど魚の種類は何でも揃う。ご当主は三原進さん。奥さんの夏江さんが買った魚の調理法にも気さくに相談に乗ってくれる。新鮮な自家製のフカの湯晒しや、くずしも毎日ある。

中井鮮魚
TEL:0894-24-3156
中井さんご夫婦

 創業45年。ご当主は中井正直さん。「魚は市場やからなんでもあるけど、ウニとイカはいつでもある」と奥さんの定子さんから伺った。ご夫婦のゆったりとした親身な接客の様子が印象的な店である。

中田鮮魚
TEL:0894-22-4212

 ご当主は二代目で中田喬さん。「トロもんが好きやけん。魚はトロもん中心で種類も多いよ。それとウニは毎日あります」と奥さんが話してくれた。山と積まれたトロールの迫力を伝える豪快な品揃え。

丸新鮮魚
TEL:0894-24-4975
豪快なマグロの切り身



 ご当主の新乙彦さんが2代目。「バチマグロやハマチ、鯛が中心かな」と奥さんが話してくれた。
あざやかな手つきでさばかれ、切り身にされてゆく新鮮なバチマグロがとてもおいしそうだった。

鈴永商店
TEL.0894-24-1415
鈴永久子さん



 鈴永久子さんが店を守る。「もう40年くらいかな。大体揃いますけど、お刺身用のアジと鯛は必ずあります」と鈴永さん。刺身用のアジには定評がある。アジが品薄の日には、鈴永さんに聞いてみよう。

田村鮮魚
TEL:0894-24-5913
田村さんと
奥さんの百合子さん。



 ご当主は田村春男さん。「僕が始めてもう30年以上かな。魚は、市場に揚がったものなら、大体なんでも入ります。ハマチ、鯛、アジ、イカ、タコ、海老みんな生きたものを仕入れるようにしています」。

ひぐち鮮魚
TEL.0894-23-1369


 ご当主は樋口三代松さん。活きの良い天然もののハゲ、善後アジ、キビナゴなどが中心。樋口さんは、毎日朝が早く、店じまいは8時前とたいへんに早い。

山西商店
TEL:0894-24-1001
TEL:0894-23-1923
山西商店の人たち



 ご当主の山西英夫さんはじめ明るく気のよいみなさんの応対が心地よい。大衆魚中心でマグロ、カジキ、ハマチ、鯛、太刀魚なんでも揃う。「アンコウの鍋もそろそろうまいし、エイは煮付けて一晩置くと煮こごりができて美味しいんですよ」と山西さん。


 以上、簡単にまわってみた。まだ行ったことがない方はぜひ、1度魚市場を訪ねていただきたい。どこの店のご主人も一様に、「魚なら何でもある。大衆魚が中心です」と言われるが、ほんとうに、ここには、大衆のための安くて、おいしくて、新しい、旬のお魚がいつもピチピチ跳ねているのである。どのお店で買っても、大衆という言葉の手応えを充分に感じさせてくれることだろう。
 魚市場に通えば、ふるさとの海の幸の豊かさを生き生きと実感できる。そして都会に住む友人達に自慢してみたくなる。活きのいい魚を扱う人々の威勢のいいかけ声や、温かい気遣いにふれて、気分がせいせいし、元気がわいてくる。
 さあ、次の日曜日は魚市場だ。八幡浜に住むことの大きな幸せの1つは、確かに魚市場が町にあることなのだと思う。
 
Copyright (C) TAKASHI NINOMIYA. All Rights Reserved.
1996-2012



それぞれの写真をクリックすると
大きくなります







トロール船が戻ってきた





セリ風景

魚市場の女性は元気だ。